ロレックスGMTマスターII・青黒ベゼル 116710BLNR 実用時計王者ブランドにふさわしいスポーツモデル
前回の記事では、みんなが待っているとわかっていながら「赤&青」ベゼルのステンレスモデルを出さずに、「青&黒」というお茶を濁したような配色にするロレックスをクソミソにこき下ろした記憶があるような、ないような・・・おかし〜な〜、酒も飲んでいないんだけど(笑)
まあ、時計ブランドの中では一番「サド系」なのがロレックスだと私は思っているのですが(笑)、そのサディズムが結果としてここまで頑丈で万能な時計を作り上げるのであれば、結果オーライなのかもしれません。
顧客にはなかなか欲しいものを与えない、そして中への時計作りの要求は厳しく(笑)クオリティーが上がっても最後にイタリアのゆるゆるの血が出てしまう某座布団時計ブランドと比べると、作りの詰めが違います。
ただな〜、最近のロレックスと比べるとまだパネライの方が面白いんだよな〜(名前言っちゃってるしwww)
ロレックスGMTマスターII・青黒ベゼル 116710BLNR 作りの良さは鉄壁、他のメーカーとの差は依然として大きい
仕様:ステンレススチールケース&ブレスレット、自社製クロノメーター自動巻きムーブメントCal.3186(パワーリザーブ約48時間:耐磁性を備えたパラクロムヒゲゼンマイ採用)、サファイアクリスタル風防、防水性:100m防水、両方向回転セラミックベゼル(青&黒)、日付表示、ブラック文字盤、ねじ込み式リューズ、文字盤のインデックスと針にクロマライト夜光塗料)、24時間表示針(3時間帯表示可能)
※今回ご紹介します個体は友人所有のものであり、ブレスレットはデイトジャストのジュビリーブレスレットに、時計ケース本体の裏蓋はスケルトン仕様に付け替えられています。
サイズ:ケース約横40mm、約厚み12mm
定価:税込91万8000円
まあ、なんだかんだと言いましたが、いい時計ですよ(笑)実際隙がない。
でも、やっぱりこの形は受け入れられん・・・
僕個人的には女性のウエストのごとくキュッと引き締まったラグを持つ5桁世代の方が好きですね。
スポーツ時計たるもの、精悍な顔をしていて欲しいと思うのです。
それが大きく横へ広がってしまう・・・
いつまでも使える現役時計として、たとえオーバーホールごとに研磨していったとしても、ケースが痩せないようにという配慮なのかもしれませんが、どうせおま〜のところは何回かオーバーホールしたら「防水性が保証できないので、ケース交換しなければうちではオーバーホールを受け付けられません」みたいな杓子定規なこと言うんだろ〜が(笑)
でも、さすがに外装は鬼レベル。 金属加工の質が半端じゃないですよね。
ギンギンに硬い金属をここまでシャープに整形しながらそれでも破綻しないすごさ・・・
雲上ブランドのスポーツモデルはその外装、特に研磨の質の高さがよく話題に上りますが、それは時計ケースの素材として比較的柔らかいステンレスを使っているからだそうです。
柔らかいからといって質が悪いわけではないのですが、そのような微妙で繊細な研磨を施すために意図的に柔らかい素材を選んでいるようです。
そういえば、ロイヤル・オークは使っているうちに傷が目立ってきますが、それはあの特徴的なギラギラ研磨が傷で光を乱反射するとともに、もともと素材が柔らかいからと言う理由もあったんですね。
でも、ロレックスはギンギンに硬い最強ステンレス904Lでここまで鋭いシェイピングをしてしまう・・・
シャープなのに手でなぞるとそのエッジは滑らか・・・そしてそのシェイプを構成している曲線は徹底的にスムーズでどこにも破綻が見えない。
シェイプに関しては6桁になって贅肉がつきましたが、それでも5桁世代から受け継がれた伝統は究極の熟成期を迎えているようです。
ここまでのクオリティーを実現するならそりゃあ、91万円もうなづける。
ここ10年の間で時計の全般的なクオリティーは大幅に上がりました。有名独立時計師のフィリップ・デュフォーさんによると、これは加工する機械の性能が上がったことが大きいのだとか・・・
まあ、機械投資に注ぎ込んだお金をそのまんま時計のお値段に上乗せしたのか、全般的な時計の価格も大幅に上がりましたが、この10年を境にして時計の特に外装のクオリティーが格段に上がったことは事実です。
程度の差こそあれ、ほとんどのメーカーにおいて外装のクオリティーが格段に上がったのです。
ただ、やっぱりどこのメーカーもロレックスのこのクオリティーには追いついてませんわ・・・。
そりゃあ、僕だってIWCは好きだし、面白いか面白くないかで言うんであればパネライの方が面白いと思う。
でも、使いやすさとか手にした感触で総合的に判断すれば、やはりまだロレックスが頭ひとつ抜けている感じ・・・。
やっぱり5桁世代で培った財産というか・・・ノウハウって本当に大きいんだろうなって思います。
中の機械なんて、パラクロムヒゲゼンマイだとか新素材をグッチャグッチャと導入してますが、基本的にその設計は30年前から変わっていません。
その土台が素晴らしかったから、ずっとアップデイトしていくだけでそのアドバンテージを保てているのであり、やはり5桁世代は偉大だったと言わざるを得ないと思うのです。
確かに一部の時計好き、特に中も弄ることができるタイプの人たちには「ロレックスは面白くない」と不評です。
ムーブメントのパーツがでかくて、さらにパーツが少ないので退屈なのかもしれませんが、結果としてよほどのことがないと壊れない最強実用時計になってしまっているので、これも致し方ありません。
今のところ過去の遺産の蓄積が膨大で、ロレックスもそこから何とか外れないように慎重に正常進化を重ねているので、その他のメーカーが追いつけていない印象です。
ただ、手にして使ってみた印象としては、正直盤石ではない・・・と思います。
一つはやはり重く、そして大きくなりすぎてしまったこと・・・。
時計本体ケースの全幅は旧世代と変わりありませんし、厚みも0.5mmしか増えていませんが、全幅とは言っても最大幅が変わっていないだけで、その他の部分は一斉に横へと膨らみ、しかもそれが縦方向にも0.5mm増えたので、感じるボリューム増はかなりのものです。
おそらくこのボリューム増がケースの重さにそのまま直結しているようで、それは着けていても感じます。
時計ケース本体とブレスレットの重さを比べると、極端に重量バランスが偏っているとは思いませんが、それでもやはり5桁世代では感じなかった「むさ苦しい」重さを感じるのです。
しかし、昔のものを懐かしむのは人間の常とも言いますし、若干アンバランスに感じるこの6桁でさえも、その他のメーカーが追いつけていないので、ここは判断が難しいところですね。
ロレックスGMTマスターII・青黒ベゼル 116710BLNR ブレスレット作りはやはり他のメジャーメーカとは役者が違う!
このGMTマスターには本来の3連オイスターブレスレットではなく、デイトジャストの5連ジュビリーブレスレットが取り付けられています。
昔の世代ではモデルごとにブレスレットを取り付ける部分であるフラッシュフィットの規格が違っており、このようなことはできなかったのですが、これも合理化の波ですね。
ブレスレットはさすがですよね。ここまでひとつ一つのコマが小さいブレスレットをしっかりとしたものに作り上げてくる・・・よくしなり、つけ心地もいいのに緩みを感じません。
雲上やそれに準ずるブランドを除けば、このクオリティーのブレスレット作ってくるメーカーは本当に限られます。
コマを大きくして剛性感を演じることなんてどこのブランドでもできますし、ブランドの格的にもっとお値段を上乗せできるところであればこのようなブレスレットを作り上げてくることも可能でしょう。
でも、実際のところ、ブレスレット制作というのは非常にお金がかかるものであり、結果としてブレスレットはもう一つ力が入っていない・・・または外注レベルというメーカーが今も多いのです。
でもロレックスはブレスレットにも手を抜かない・・・素晴らしいです。
ただ、以前のジュビリーブレスレットはやはりコマが小さくて連結部分が弱いためか、緩んでくるものが多く見られました。
それでも、全体的な重量がそれほどなかったので、「ああ、緩くなってつけ心地が良くなったな」くらいで済んでいたのですが、6桁世代がここまで重くなってくるとどうなのか・・・それが心配です。
ロレックスのブレスレットはすごく良くできていますが、決して緩まない訳ではありません。しっかりとした構造の6桁3連オイスターブレスレットでも緩んでくるものはあります。ジュビリーとなるとコマの分割が本当に細かいだけにそれが心配ですね。
ただ、ブレスレットの剛性感がガチガチにあればいいのかといえばそうでもない訳で・・・人間の柔らかい肌に着用する訳ですからある程度しなやかな方がやはり心地良いのも事実です。
実際IWCのパイロットウォッチのブレスレットは以前はコマが小さい割にはかなり剛性感があったのですが、それが現行世代では少し緩さがあるものに変わってきています。
ブレスレットも研究されて進化する・・・そしてそれができるメーカーはやはり限られてくるのです。
ロレックスGMTマスターII・青黒ベゼル 116710BLNR 唯一の弱点といえばやはり視認性か・・・
正直、シェイプに関しては僕の好みじゃないだけで主観の問題ですし、重さについても最近の時計はみんな重たいので、それほど弱点と言えるような弱点にはならないと思いますが、唯一弱点らしい弱点といえば視認性でしょうか。
文字盤のデザインのコントラストが強いのでそれほど見えにくいというわけではありませんが、文字盤が光沢のあるブラックなので、風防のサファイアクリスタルと反射しあって、豪快に白く光ってしまう時があります。
かと言って、時刻の視認ができないわけではないですが、弱点といえば弱点かもしれません。
風防に無反射コーティングを施さないことについては賛成です。 あれが剥がれてくるのはやっぱり嫌。 でも、スポーツモデルの文字盤にはやはり反射を抑えて視認性が良くなるマット塗装の方がいいのかなあ・・・と思います。
まあ、暗所での視認性に関してはロレックスがパラクロムヒゲゼンマイとともに得意げに喧伝しているクロマライト夜光塗料のおかげでよく見えますね。
ただ、最近夜光塗料の視認性に関しては、他のメーカーでもかなり力を入れてきているところがいっぱいあるので、特にすごいというほどのものでもありません。
発光時間が2倍になったとのことですが、「まあ、言われてみればよく光ってるかな・・・」ってなもんです。
ベゼルの操作感に関しては、以前にインプレした116710LNと変わりませんね。ベゼルのカラーリングが変わっただけで、基本同型モデルなので当たり前といえば当たり前です。
少し固めの抵抗があった後、そこから滑らかにスーッと動いてパチン!と止まる。 この感触は高級感があって素晴らしいですね。 さすがロレックス、こう言ったところは手抜かりなしです。
GMTマスター2が今の現行6桁に入れ替わったころ、正規店の店員と「あのデザインはどう考えてもモデルチェンジ失敗なんじゃないだろうか」と話し合っていたら、違う店員が「でも、ベゼルの操作感とか隔世の感があり、やはりおすすめは新型」と言っていたのが印象に残りました。
触ってみるとやはり5桁とは全然違うので、こう言ったところは本当に素晴らしい正常進化だと思います。
ねじ込みロック式なので、リューズを回してロックを解除。 それからリューズをさらに回してゼンマイを巻き上げます。「ギリギリギリ・・・」という相変わらず剛性感を感じる硬い回し心地・・・。
そして、リューズを一段引き出して時計回りに回すと、短針が1時間ずつ「カクン!カクン!」と動きます。 日付の単独調整ができないので、短針を2回転させることによって日付を一日早送りさせます。
短針を動かす感触も小気味好く、それでいてぎこちなさが全然ない・・・こう言ったところのそつのなさがロレックスですね。
リューズをもう一段引き出すと秒針が止まり、そこからリューズを回すと長針が動き始めます。 時刻調整ですね。 相変わらず固めの感触・・・針はふらつきもしません。
こうやって使用感を全般的に見ても、やっぱりいい時計です。そつなくまとまっており、致命的な弱点は見当たりません。
全てが非常に高い平均点でまとまっているという印象で、むちゃくちゃ突出したところもないんだけど、全体のまとまりが非常にハイレベルなので、これはまだ他のメーカーにはできてはいないなと・・・。
ただ、なんとなく感触的には5桁世代から続く円熟期がピークを迎えつつあるような気がします。 前世代の遺産が大きいから、細かなアップグレードで依然として大きなアドバンテージを保てているけど、そこからさらに上へと向かっていくひらめきとか、新鮮な気持ちを感じるかといえば疑問なんですよね〜。
いつもお読みいただきありがとうございます。 感謝!!